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「水の迷宮」

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水の迷宮石持浅海/光文社
★★★★☆
死にかけていた水族館を再生させる核となった人物が、不慮の死を遂げて3年。彼の命日である今日も、生き返った水族館は大勢のお客で賑わっていた。
そんな中で起こった、展示されている水槽に仕掛けられた攻撃。館長に届けられた携帯電話に送られてくる、犯人と思われる人物からの攻撃を示唆するメール。それらに翻弄される職員達。
犯人は一体、何を目的にしているのか・・・。
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動物園も水族館も、心惹かれながら、何かしら抵抗を感じる場所でもあります。
本来なら、近くで見(まみ)えることもない生き物を、間近で存在を感じることができるという素晴らしさ。それによって救われるもの(生き物自身である場合もあり、人である場合もある)があり、それによって夢を持つ子供達や大人達がいる。けれど、そのために、その生き物を本来生きてきた場所とは違う場所に繋ぎとめることへの罪悪感。
決して、これだけの場所ではないとも思うのですけれど。

そんな葛藤を持つ私ですが、読み終えた時、片山が抱えていた壮大な夢に心が震えました。それがいい悪いではなく、それだけの夢を持ち、それに向って突き進む力、そしてあのラストに不思議に震えてしまったのです。
これはミステリです。でも今や、ミステリというだけでは括れないミステリが多いですね。人の温かさ、切なさ、強さ、美しさ、尊さ、そういったものが織り込まれているミステリも多く、もちろんそういったミステリが私は好きです。このミステリも、謎を追う面白さも持ち、そしてそれだけではない。いや、そうじゃない部分の方がメインなのかも。犯人が誰なのか、よりも、片山の夢とは何だったのか、の方が気になって仕方なかったですから(笑)
ラストへ向う途中で「それでいいのか?」的な箇所がありはしましたが、この物語はその点についての是非を問うものではないのでしょう。

個人的葛藤を抱えつつも、こんな水族館なら思わず訪れてしまうかもしれない・・・と思ったりもしました。

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