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「暗黒童話」

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暗黒童話乙一/集英社
★★★☆
事故で左の眼球と共に、記憶を失ってしまった菜深。菜深を哀れんだ祖父は眼球移植を受けることになった。
熱い痛みと共に現れる見知らぬ映像。映像に現れる少女の温かい眼差しに、記憶を失って以来緊張と不安を感じ続けた菜深は癒されるのだった。何度も何度も、その度に違う映像を見せる左目。その映像の記録を綴り続ける菜深は、やがてその映像が左目の記憶であることを、恐ろしい映像と共に知る。
映像の町を、そして左目の持ち主であった少年とその姉を求めて、菜深は家出をする・・・。
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痛い・・・。身体のあちこちがむずむずする・・・。眼球が・・・腕が・・・足が・・・あぁぁぁぁぁ・・・。
と、前半こそ「読むの、やめた方がいいのかなぁ」とマジで心配してたのですが、後半はそうでもなかった。どころか、上手い書き方にしっかり騙されてしまい(直感は働いたのに、その直感をめくらましされたって感じ。笑って「やられた~」と言える上手さだったなぁ)、ミステリー的には楽しめました。痛そうな描写がもっと少なければ言うことないのだけど、まぁ、それを削ってしまったら、このお話そのものが成り立たないから仕方ない。
事件自体も酷い話だけど(観てはいないが「ボクシング・ヘレナ」を思い出した。)、菜深の周りの人間の酷さも凄い。普通眼球をなくして、ショックで記憶を失った相手を前にして、存在そのものを否定するような行動を取れるか?そういう人間しか周りにいない(父はちょっと違ったかなぁ?)というのがもっと恐い気もする。まぁ、これもこういう環境に陥らなくては、菜深の旅も始まらなかったのだろうから、言うだけ無意味だろうが。

amazonにも「長編ホラー」としてあるし、確かにホラーっぽい感があるし、あとがきやらを読んでも、集英社から刊行されているこれはホラーに区別していいのだろうけれど、でもただのホラーじゃないし、とも思う。推理・ミステリーでもあるし、記憶をなくした少女がアイデンティティを求めるお話でもあると思う。
ラストのシーンを思えば、少女のお話である部分がとても強いように思えた。もちろん読んでる最中は「やっぱりホラーなミステリーで、結末ももう暗澹たるものかも~」と何度も思わせられたけど(笑)
読んでる最中は「乙一さんの作品はこれを最後にしちゃうかも・・・」と思ったけれど、ラストシーンを読み終えて、やっぱりもう少し読んでみようと思えたのだった。

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