石田衣良/文藝春秋(文春文庫)
★★★★★
平和で緑豊かなニュータウンを一変させてしまったのは、9歳の少女の殺人事件だったことと、その犯人が13歳の少年だったこと。
世間から激しく歪んだ正義の感情を叩きつけられる中、少年の兄・幹生は弟が何故事件を起こしたのか、その気持ちを、原因を探ろうと決意する。
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あらすじや帯書きなどをちょっと読めば、この小説が何を題材にしているのかすぐに分かることでしょう。
題材として選んだものは現実の事件だけれども、あくまでも小説。だからと言って軽視するのでもなく、重要視するのでもなく、ただ予断を持たずに読んで欲しい。私がちょっと予断を持って読み始めてしまったから(反省)。
カテゴリーを「推理・ミステリー」としたが、これは少年の心の成長の物語でもある。もちろん推理的な要素は十分に持っているし、その読み応えだってある。
警察の態度にせよ、親の子育ての仕方にせよ、学校の在り様にせよ、そして報道の姿にせよ、恐らく世のありとあらゆるものは、自分自身が見方を誤れば、全てが人を苦しめ死に至らしめる凶器になる。幹生が間違った大人達の判断・行動の只中に置かれて、それらすらも糧として、自分自身の中に確固としたものを持ち得た姿は、暗い事件と数々の人の愚行の中にあって、大きな救いだ。
私も、幹生のように『正しさの基準を外側にではなく、自分自身の中心に据え』ていたい。そして『ほんとうに大事な質問のこたえを出すのは頭じゃない、心なんだ』ということも忘れずに・・・。
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